生まれ変わっても一緒にいよう。
なんて、良くあるありふれた告白だ。
小説でもマンガでもドラマや映画でも、そういった場面というのは多く存在する。
「……桐ケ谷と?」
リビングで本を読んでいた斉士であったが、流石にその問いには眉を寄せて視線を彼女へと向けざるを得なかった。
訳がわからない。何故そこであの男の話題になるのだろう。
「冗談じゃない。もうあんな危なっかしい男に付き合わされるのはごめんだよ」
大きく溜め息を一つ零して、斉士は肩を竦めさせる。
そういえば最近連絡がない。と一瞬考えもしたけれど、すぐに思考を切り替えた。
共に過ごしていた時間が楽しくなかったと言えば嘘になる。
彼の存在は間違いなく自分の救いになっていた、それも事実だ。
だがそれでも、来世でまた一緒にやりたいとは思わなかった。
何より、そんな不確かなものを信じるほど純粋でもない。
「じゃあ」
隣の彼女が悪戯げに笑う。
再び本へと視線を戻そうとしたが、それも彼女が本を取り上げてしまったから叶わなくなった。
「私はどうですか、斉士さん」
取り上げられてしまった本から、彼女へと視線が流れる。
なるほど、そういうことかと合点といった斉士は、緩く笑った。
「会いたいとは思うかな」
その言葉に、意図が汲み取れない彼女は目を瞬かせる。そんな彼女の様子に呼気を漏らして笑い、斉士は彼女の髪に優しく触れては梳いていく。
「信じていないんだ。その手のことは。それに、仮に次があったとして、その人生は次の俺のものだし、次の君のものだろう」
だから、仮に次の生があったとしても、一緒になるとは言えない。
そんな不確かな約束などできない。
それでもきっと、
会いたいとは思うのだろう。
彼女の意にはそぐわない回答だっただろう。それがわかっているから、斉士は名残惜しげに彼女の髪から手を離した。
けれど、その手が落ちるより前に、緩やかな動作で彼女の指が絡む。
確かめるかのように、きゅ、と細く小さい手指に力が篭った。
「それなら、私が斉士さんのこと見つけ出します」
そうしたらきっと、多分私はまた好きになると思うから。
そんなことはない。と切り捨てられるだろうに、あまりに彼女が愛しげに、自信満々に言うものだから、斉士は何も返すことが出来なかった。
ただ、込み上げてくる愛しさと、泣き出したいほどの幸福に、微笑むことしかできなかった。